「リボ払いだけは絶対やめとけ」
一度は言われたことがないだろうか。
リボ払いの仕組みは知らずとも、「人生で手を出してはいけないものリスト」の中に入れている人は少なくない。
僕もその一人だ。
なのに、つい数日前、自分がリボ払いをしていることに気づいた。
「リボ払いだけはしない」と心に決めつつ、毎月のようにリボ払いをしていたのだ。
リボ払いが本当にヤバいのは、「そのヤバさをカモフラージュして近づいてくること」だ。
あなたも、気づいていないだけで、すでにリボ払いの渦中にあるかもしれない。
この記事は、リボ払いがなぜ危険なのかを具体的にわかっていない読者に、その危険性を追体験してもらうために書いた。
リアリティをもって、自分ごととしてその仕組みを理解できるように努めた。
それだけではなく、リボ払いをしていることに気づいた場合の対処法、今回の一件を通して得た教訓についてシェアしたい。
本記事には、そんなことを書きました。
ほんの一部でも、あなたの財布に空いた穴を塞ぐ当て布になれば、これに過ぎたる喜びはありません。
僕の財布から去っていった、「勉強代」のためにも。
もくじ
「ご入金の確認が取れておりません。」
毎月口座から差し引かれる、1万5千円。
『ポケットカード』という会社から、サブで使っているクレジットカードの『Tカードプラス』の利用額として、メールが届く。
ノートPCを購入したときの分割払いか。
電気代の引き落としか。
明細を把握していなかったが、「1万5千円は毎月支払うもの」として習慣になり、請求されるがままになっていた。
メールに載せられたリンクからweb明細を見れるのだが、IDとパスワードを忘れてしまい、再発行も面倒で、見ないままになっていた。
あるとき電話が入った。
ポケットカード株式会社からだった。
「先月支払い分の入金が遅れており、入金期限も過ぎたので、直接口座に振り込みしてほしい」という内容だった。
メールを遡ってみると、たしかに、ポケットカードから「入金の確認が取れていない」旨のメールが届いている。
入金が遅れたのはこちらの落ち度に間違いない。ただ、これもいい機会なので、毎月支払っている1万5千円の明細を聞いてみることにした。
1年越しにweb明細とご対面
「こちらでは、何にお支払いされているかはわかりかねます。支払いはリボ払いになっているようですが…」
入金が遅れた支払額の振込先口座を案内した後、僕の質問に対してオペレーターは上記のように答えて、別のダイヤルを案内した。
(なぜ明細がわからないのか?)
率直な感想だった。
通話しながら、思わず小首を傾げてしまった。
ポケットカード株式会社。まともな会社なのか?
それより、オペレーターとの会話で引っかかったのは、次の単語だ。
「リボ払い」。
イヤな予感。
いや、確信に近い。
あやしい。
いいきっかけだ。
パンドラの箱を開けよう。
メールのリンクからポケットカードのログイン画面に飛び、「IDとパスワードの再発行」の画面に移る。
カードに記載されている番号やら、名前や生年月日やらを入力して、IDとパスワードを再発行した。
なんだ、こんなに簡単なら、もっと早く再発行すればよかった。
そう思いながら、先ほど登録したIDとパスワードを打ち込んだ。
ログイン後のページには、奇妙な明細のPDFが添付されていた。
ご利用金額0円、ご請求金額15,000円
請求額1万5千円。
しかし、明細は空。
ご利用金額、0円。
驚いたのは、支払額の残高。
423,670円。
よ、よんじゅうまん?
え、おれ40万借金抱えてたん?
「ずっと黙ってたけど、実は、本当のお父さんじゃないんだ」
って言われるレベルの衝撃。
1万5千円の請求の内訳も、よく見るとおかしい。
元金が8,733円、手数料・利息が6,267円だ。
「えっ、手数料、高すぎ…」と口に手を当ててしまう。
ほぼ半分手数料やん…
理解が追いつかない。
なにこれ?
正体がわからない恐怖。
先月分の請求書を開く。
これも同じ。
1万5千円を請求されつつ、明細は空。
数ヶ月さかのぼると、ようやく明細欄に記入のある請求書にたどりついた。
その明細には、何の変哲もない、Amazonで数回買い物した利用明細が残っているだけ。
高額商品を買った形跡もない。
おそらく、メインのクレジットカードが何らかの事情で使えないタイミングで、代わりにTカードプラスで買い物したのだろう。
そういった理由でこのカードを利用した月が、いくつかあった。
…ネットで調べたリボ払いの仕組みと、自分の身に起きたことを照合して、ようやく腹に落ちた。
僕が知らない間に高額商品に手を出していたわけではない。
ポケットカード株式会社が怪しい会社なわけでもない。
ただただ、「リボ払い」が危険なだけだった。
リボ払いの仕組み
リボ払いは1970年代にアメリカから始まった、クレジットカードの支払い方法の一つ。
超簡単に一言で表すと、
手数料がバカ高い分割払い
わかりやすくするために、丸っこい数字で例を挙げて解説する。
正確さよりも、理解しやすさを重視していることを、先に断っておく。
たとえば、あなたが10万円のPCをリボ払いで購入したとする。
毎月の支払い額を1万円に設定したとする。
直感的に「10ヶ月で支払いが終わる」、と思うが、そうではない。
支払い残高から削られるのは、支払い額1万円のうち、6000円。
残りの4000円は手数料だ。
10万円のPCの支払いを終えるには、10万円÷6千円で17ヶ月かかる。
およそ1年半だ。
また、手数料を17ヶ月分、つまり4000円×17ヶ月で6万8千円もムダに払うことになる。
もちろん、その間にリボ払いで別の買い物をすれば、支払い残高に上乗せされる。
だから、支払い残高はなかなかゼロにならない。
毎月の支払額に大量の手数料が含まれていることを忘れてしまう。
毎月の支払いは少額だから、そこまで痛みを感じない。
リバ払いを利用している人は、見えないところで「借り」が積み重なっていることに目を背けたまま、日々を過ごしている。
ただ、真に恐ろしいのは仕組みそのものではなく、「擬態の巧妙さ」だ。
どのようにして、甘いジュースと装って若者たちに毒を飲ませているのか?
「気づいたらリボ地獄」状態に陥らせているのか?
以下、その仕組みについて解説していく。
生活に溶け込む悪魔
リボ払いは、姿を隠し、ときには変装してあなたに近づいてくる。
消費者の生活に溶け込む技に長けている。
「カモフラージュ」と「刷り込み」の2種類に分けて見ていこう。
カモフラージュ
元来、戦闘服は「敵味方の区別をつけるためのわかりやすいデザイン」が多かった。
刀や槍での近距離戦が主流の時代の話だ。
それがカモフラ柄のような「目立たない」デザインに変わったきっかけは、鉄砲や大砲といった射程距離の長い武器の登場がきっかけ。
存在を隠して、撃つ。
敵の存在を認識する前に、気づけば命を落としている。
殺傷能力の高いものほど、危険性を隠す。
リボ払いも同じ戦略を使う。
ツタヤのTカードにクレジット機能をつけた『Tカードプラス』は、なんと初期設定がリボ払いになっている。
そりゃ、気づかなくても無理はない。
ツタヤで「クレジット機能もつけれますよ」と案内され、「じゃあつけてください」と答えたピチピチの青少年たちは、みんなリボ払いを強制されたわけで。
こんなもん、詐欺。
良心ある大人がすることではないのは確かだ。
Tカードプラスは初期設定がリボ払いだから、使っている人は、支払い料が膨れ上がらないうちに、カード会社に連絡して元金を一括で支払った後に、今後の支払い方法を「一括払い」に変更するか、カードの利用を停止しよう。
リボ払いの悪質さは、カモフラージュして近づいてくることだけではない。
もっとタチの悪いことをしている。
存在を隠すどころか、「リボ払いは好感の持てるもの」という刷り込みをかけてくるからだ。
刷り込み
「リボ払い」という単語を聞いて真っ先に「かわいいウリ坊」の姿が思い浮かぶのは、僕だけではないはずだ。
多くの子どもたちは、クレジットカードを手に入れるずっと前から、リボ払いという単語を認識する。
小学生時代、「ドラえもん」を観ていると、合間に↓のCMが流れた。
巧妙。
幼いころからリボ払いへのイメージをマイルドにしておく。抵抗感をなくしておく。
リボ払いという単語を見ても、第一想起するのは、かわいらしいキャラクター。
クレジットカード会社なりに考えた、「搾取の準備」としか思えない。
未だにウリ坊の動画を見ると、リボ払いのCMを思い出す。学生の頃によくやってて、中山エミリの肩に「リボ!リボ!」と鳴きながら乗っかってた羨ましいウリ坊のぬいぐるみが印象的だった。
両者とも可愛らしい見てくれだが、27歳になった今コイツらはただの悪魔にしか見えない。 pic.twitter.com/0qSLZhYTiC— 中嶋條治 (@nakajimaclub) January 22, 2021
良い顔して近づいてくるものといえば、アムウェイの勧誘もそうだった。
最初はフレンドリーに近づいてくる。
が、会う回数をある程度重ねると、本当の目的を切り出してくる。
断りづらい関係性を、最初に構築する。
「親しい相手からの要求は断りづらい」ということを、彼らは心得ている。
悪いヤツほど優しい顔をつくる。
40万一括払いで買った教訓
リボ払い残高の約40万は即座に一括払いし、同時に、Tカードプラスの利用も停止した。
痛い出費だったけど、40万で済んでよかったとも思う。
高額すぎたけど、良い勉強になったと割り切る。
今回の一件で学んだ3つの教訓をぜひともシェアさせてほしい。
・面倒ごとこそ放置せずすぐさま対処
・お金の出入りを正確に把握せよ
・知らぬ間にリボ払いになっていることがある
稼ぐことよりも何よりも、お金を増やす初手は、ムダな出費を減らすこと。
読者の皆さんも、「なんかよくわからないけど毎月支払ってる」という出費があれば、掘り起こして、そこにライトを当ててみてください。
金がどこに流れているかを確認してください。
ドブに流れていた出費が、まるまる資産に変わるかもしれませんよ。
最後まで読んでいただき、感謝します。
ありがとうございました。