文房具店で出会い、ひとめぼれしたノートがあります。
それが、ペーパーブランクスのノート。
「まるで魔術書」と称されるこのノート。
店頭で見かけ、「ほしい!」と思ったことがあるかも知れません。
すでに手に入れたかもしれません。
しかしこのノート、使い方に困る。
美しいがゆえ、ラフに使えない。下手な使い方で汚したくない。使ってナンボのノートなのに、使うのを躊躇する。
その気持ち、わかります。僕も購入から半年持て余しました。
しかし、ついに、最適な使い方を発見しました。
それは、「抜き書き帳」として使うということ。
「置いておきたくなる」「丁寧に書きたくなる」このノートに、抜き書きは相性ぴったり。
本来は身につきにくい筆写の習慣が身につき、語彙力と表現力が向上します。
「抜き書きとはなんぞや」ということも含め、以下、徹底的にレビューしていきます。
もくじ
麗しきノート、ペーパーブランクス
ペーパーブランクスの特徴は、なんといってもそのデザインでしょう。
高級感があり、微に入り細に入り美しい。
触るとわかります。単なるプリントではないと。刻印のように模様が表面に刻み付けられています。
発色がよく、撫でるとツルツルした感触があります。
見た目だけじゃなく、質感へのこだわりも相当。
職人の手作業でつくられているそう。
もちろん背表紙も同様。
表面に目が奪われがちですが、このノート、非常に芸が細かい。
なんと、ここにも模様が。
ノートというより、本。
本というより、インテリア。
といった佇まい。
壁に立てかけておくだけでも雰囲気が出る。
僕の住む5畳半の片隅からも、優雅な雰囲気を放ちます。
ちなみに「ペーパーブランクス」は、日本語で「白紙の本」という意味。
自分が書くノートを1冊の本のように捉えるという考え方です。
本のように、しおりがついています。真っ赤。
紙面はシンプルな横罫。罫線の幅は8mm。
方眼タイプもあります。
裏表紙の裏にポケットがついており、ふせんやカード等、平たいものなら収納できます。
『3行で撃つ』との出会いで「抜き書き帳」へ
ここからが本題。
スケジュール帳タイプなら、そのままの用途で使えばいい。
でも、困るのはノートタイプを買った人、もしくはこれから買う人。
雑に使うのは気が引ける。なぜなら美しすぎるから。
僕も、買ってから半年くらいは手がつけられませんでした。
このままじゃもったいないと無理やり使い始めた当初、「自分の好きなものを描く」「人生の指針を書く」といった使い方をしてました。
どこか、しっくりこなかった。
使い方が、このノートにふさわしくない。
「ていねいに書きたい」「残しておいて見返したくなるものを書きたい」。
このノートと対峙して感じるこの気持ちに、ハマる使い方はないか。
悩んでいたところ、1冊の本に出会いました。
その1冊とは、朝日新聞の記者である近藤康太郎さんが書かれた『三行で撃つ』という文章術の本です。
そこで紹介されていた文章上達の訓練が、「抜き書き」。
わかりやすく言えば、
本を読んでいて、自分の琴線に触れた文章を、手帳に書き写す。
これが抜き書きです。
「抜き書き」がもたらす効果
抜き書きの効能は下記の通り。
①語彙(ボキャブラリー)が増える
②自分が分かる
③起承転結の「転」をつくれるようになる
自分が感銘を受けた文章を書き写すことで、読みっぱなしにしておくよりも格段に、自分の言葉になります。つまり、ボキャブラリーが増える。
また、自分の興味関心を強く惹くものがなにかが、抜き書き帳を見返せば見えてきます。つまり、「自分が分かる」。
そして、手書きで感動した文章やロジックを書き写して寝かせることで、バラバラの文章が脳内で結びつきます。
意外性のある結びつき。これが、文章コンテンツで「転」を仕掛けるのに役立ちます。
これが、抜き書きの効能です。
ブロガー、ライター、小説家など。
日々文章を書き、上達を目指す人にとって、抜き書きは「筋トレ」のようなもの。
筆写も「3年続けてやっと効果が出てきた」というほどですから、即効性はありません。
ですが、だからこそ、カンタンな文章術だけで済ませている書き手と比べ、本質的な文章力で差をつけることができます。
…そこで、ペーパーブランクス。
考えれば考えるほど、「抜き書き帳」が用途としてハマると思います。
最後のページまで使い切っても保存しておきたくなり、ときに手にとって開きたくなるデザイン。
自分の琴線に触れた言葉を愛で、保存し、振り返る。
そこらの安いキャンパスノートで済ますより、よっぽど抜き書きを楽しめると思いませんか。
私ごとですが、僕には、死ぬまでに小説を商業出版するという夢があります。
それを叶えるため、小説を読んで気に入ったフレーズを、ペーパーブランクスに書き写しています。
「小説の書き出しって難しそう」って思ったら、書き出しだけをひたすらに抜き書きしたり。
「風景とか人物の表情や動きを描写するのって難しそう」って思ったら、ひたすらそこだけ抜き書きしたり。
だんだんパターンが見えてきて、また、表現が染み着いてきて、自分でも書けそうな気になってくる。
ほかにも、好きな曲の歌詞や、ビジネス書、筋トレ本の心に刺さる一節なんかも書き留めています。
抜き書きは地味な鍛錬で、効果が出てくるまでに時間がかかる。読書とセットの習慣で、社会人で忙しくなってくると、継続を投げ出す理由なんていくらでも出てくる。
でも、こんな美しいノートなら、むしろ1日1行は誰に頼まれるでもなく書きたくなります。
文章力向上の鍛錬を絶やさない保険としてのペーパーブランクス。
こんな使い方、いかがですか。
ペーパーブランクスの紙質へのこだわり
ペーパーブランクスのノートは紙質に優れており、どんなペンでも書きやすい。
紙面はベージュ。照明の光が反射しづらく、目に優しい色合いです。
紙が厚めで、潤沢な万年筆のインクで書いても裏写りしません。手持ちのLIFEノートと比較した画像が下記。
LIFEノートも良い紙が使われていますが、その半分程度の裏写りに抑えられています。
触った感じ、同じく高級紙が使われているLIFEノートやツバメノートよりもハリがあって硬い。
これらの特徴からLIFEノートは書き殴りでアイデアを出す、ペーパーブランクスはお手本の文章をていねいに書く、というスタイルが適しているように感じます。
表紙、中のページともに丈夫なので、長期保存は大得意。
採用されているモチーフ
小説の挿絵、表紙、風景、偉人、絵画、紀元前の論文(天文誌)、十二星座…
ペーパーブランクスの表紙として採用されているモチーフは、「古く偉大なもの」が多いですね。
柄が豊富で、あなたの趣味にドストライクなものが1つは見つかるはず。
男性にウケそうな重厚感のあるものもあれば、女性にウケそうな華やかなデザインのものもあります。
種類が多すぎて全ては紹介できないので、僕が買ったものだけ紹介します。
「太陽と月光」
この太陽と月光のデザインは、ダ・ヴィンチの陽光と月光の相関に関する考察メモをモチーフに再現したものです。
なんでしょう、「創作の情熱」が伝わってきます。ノートの中に書かれたメモをノートの表紙にしてしまうという発想の転換。
「自分もこの細やかなメモのように、世の中をつぶさに観察していこう」という気にさせてくれます。
筆記の1文字1文字に彫られたような凹みがあります。精到な作り込みに感服。
ちなみに、裏表紙をめくったところに、英文でモチーフのタイトルと解説があります。
Google翻訳にかけてみました。
おそらく史上比類のない一連の作品の中で、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452−1519)のスケッチと豊富なメモから、天才の心を覗き込むことができます。彼は鏡像の筆記体で自分の世界と心の旅を注意深く記録した、完璧な製図家でありスケッチアーティストでした。無限のスペクトルにまたがる飽くなき好奇心を持つ彼は、宇宙の優雅さと幾何学的構造の概念に同時に取り込まれました。
私たちの表紙は、レスター写本に記録された、太陽の輝くに対する月の光に関するレオナルドの科学的観察と理論を特集しています。歴史上最も有名な人物の1人を垣間見ることで、レオナルドが人類の偉大さの可能性にどのように光を当てたかが明らかになります。
直感で気に入って購入したデザインのモチーフの由来を確認することができます。
「Poetry in Bloomミモザ」
悩んだ末に購入した1冊目。
童話の森を連想させるような柄ですね。オジギソウを中心に、4つのスノードロップが取り囲んでいます。
緑色、自然が好きなこともあり、これを選びました。
解説をGoogle翻訳にかけてみると、以下のような和訳が出てきました。
「ブルームの詩」
適切な植物よりも詩を助長する植物を想像することはほとんどできません。「敏感な植物」と名付けられました。シャイな植物としても知られる繊細な植物は、恥の植物とタッチミーノットは、触ると縮む葉を持っています。暗闇ではしっかりと閉じ、光に向かって開きます。
Poetry in Bloomのカバーに再現されたデザインは、Rivrere and Sonによって作られ、金箔のフィレット内に緑のモロッコで作られています。センターピースは繊細は植物で、スノードロップやその他の豊かな色合いと対照的な花、葉、蝶を含む部屋に囲まれています。元の装丁はパーシー・ビッシュ・シェリーの『The Sensitive Plant』と『Early Poems』に使用され、エントロピーとカオスに傾く世界で意味と秩序を見つける方法を探究するための紋章として敏感な植物を採用しています。私たちの表紙は、クリエイティブな精神のさまざまなムードを祝福しています。私たちがこれまでに手がけてきたバインディングの現代的なスタイルに、あなたがインスパイアされることを願っています。
ペーパーブランクスのノートのサイズ一覧
ノートタイプのペーパーブランクスには、3種のサイズがあります。
【種類】 | 【サイズ(短辺×長辺)】 |
ミニ | 9.5×14 cm |
ミディ |
13×18 cm |
ウルトラ | 18×23 cm |
ギミックがおもしろい!
ペーパーブランクスには、留め金つき、マグネットカバーつき、バンドつきなど、さまざまなタイプがあります。
通常のノートには無いギミックがおもしろいですね。
ミニサイズで留め金がついているものはパスワード帳に使うのも良さそう。各種サービスのパスワードやIDをメモしておくのにちょうどいいサイズと存在感です。
ペーパーブランクのデメリット
個人的には紙面は無地が好きなのですが、ペーパーブランクスのラインナップには無地が少ない。
できるだけ大きいサイズで書きたいので、「ウルトラ」を使っているのですが、店舗でもネットでも、このサイズの無地を見つけられませんでした。
でも罫線を買ったおかげで「抜き書き」を始められ、習慣にすることができました。
今となっては2冊目以降も抜き書き帳として使い続けるつもり。なので、無地がなくても不満はありません。
また、A4ほどの大きいサイズがありません。
広い紙面で思い切り書きたいという人は物足りないかもしれません。
最後に、表紙の素材の特性上、タイトルを書き込むことができません。
ペーパーブランクスのノートはどんな人にオススメ?
・抜き書き帳を探している人
・ちょっと変わったノートを探している人
・多少値は張っても、良いノートを使いたい人
・文房具好きな人
・クラシカルなものが好きな人
・書いた後も置いておきたくなる、見返したくなるノートがほしい人
・万年筆でも快適に書けるノートがほしい人
おわりに
クラシカルで高級感があるものが好きな人には、ドンピシャで突き刺さるノート。
文房具好き、手書き好きなら試して損はありません。
こんなに美しく質の高い毎日使うものが2000円程度で売られているのは、僥倖と言わなければなりません。
このノートを使っていて感じるのは、「デザインの魅力で行動は変わる」ということ。
お迎えしてから、難易度の高い「抜き書き」という筆写習慣を継続できているのは、偶然ではないはず。
使わなくなっても、インテリアになる。そこにいるだけで役割を果たします。
死角がない。
しばらく使ったからには、レビューせざるを得ない使命感にかられ、いつもより熱を込めて本記事を書きました。
それほど魅力的で、内緒にしておくには、罪悪感を感じたほど。
欲深い僕は、このノートがもっとほしい。
だから、たくさんの文章に触れ、書き写します。一冊を早く使い切るために。
こうして、このノートのおかげで文章力、ボキャブラリーが養われていくという最高のサイクル。
使い方は決まりましたね。
あなたもぜひ、ペーパーブランクスで至福の手書き時間に浸ってください。